湘南寺田屋

個人の記録用。元々は山スキーやクライミングの記録用だったが今は料理やらオルガンやら日々の雑多な記録多し。2016−21間はシドニー滞在していた時の記録。23.7月から山の記事はサブブログに移管。以前の記録もサブブログでアーカイブ。

鹿島槍北股本谷

前日3日、家族で上高地散策に行った後、自分だけ残って日帰り山スキー。快晴を狙い、年に一度少し気合を入れた山行である。

黄色線は当初予定。赤線はGPSデータから作成した実コース。f:id:teradaya:20071216000031j:image

松本駅で家族を見送った後、大谷原の岳峰ヒュッテに入り、H野シェフにお世話になる。高校時代からのお仲間とT本さん&キッズも同宿で、楽しい夕食会となる。F谷夫妻も到着し岩魚の骨酒などいただくが、翌朝早いので先に休ませてもらう。

4日早朝、3時45分起床。岳峰ヒュッテからそっと起きだし、車で5分の大谷原へ。20台ほどの車が停車している。1パーティが先行していった。結局この日の山スキーヤーは私ひとりだけであった。ピッケルやらアイゼンやらもあり、準備にやや手間取り4時35に出発。モルゲンロートの山を眺めながら林道を進む。アイゼン、ピッケル、ヘルメットなど持ったうえ板を担ぐと結構重い。西沢出合の少し前で雪が出てきたので運動靴をデポしてシール歩行に切り替え。消えそうな雪を拾いつつ西沢出合に5時30分到着。天幕ひと張り。

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モルゲンロートの後立山を目指す     出合より目指す本谷(奥右に向かっていく)

[本谷取り付きには堰堤が4つほどあるが、いずれもトレースがあり快適に越えていく。シールトレースはなく皆ダイレクト尾根等の登攀パーティの模様。堰堤の上は緩傾斜帯で古いデブリは融解が進みシールで越えていく。傾斜が増してくると左右の小沢からのデブリが積み重なったエリアとなる。すでに落ちきっているので雪崩の危険はないが、石やブロックがすっ飛んでくるので、ヘルメットを装着。ひゅんひゅんと音を立てて縦回転で飛来する黒い石は恐怖である。ブロックは大体通路が決まっているようなので、なるべく高い場所を選んで避けていく。

f:id:teradaya:20070506104952j:image狭くて暗いデブリ

天気は快晴で申し分ないが、日差しが出てくると崩壊音が頻繁になる。2000mを越えて布引尾根が近づいてくるとドカーンという音が響き、右岸(登高時左手)の壁からザザーッと土砂交じりの雪崩落がおこり驚かされる。大きいものは先ほどの下部地帯の右岸側に達している。危険は感じないが頻繁に起こるので気持ち悪い。南峰ダイレクト尾根に向かう先行パーティ3人組に追いつき、エールを交換して分かれる。このあたりは本谷の古いデブリが溜まっておりシールでは難渋する。これから上はさらに傾斜も増すので、アイゼンに切り替えることとした。ここからは自力でステップを切っていくことになる。雪は緩くもぐるので両手はストックのままでひとり本谷を登っていくと、南峰直下のコルに突き上げる左俣側から小規模な表層雪崩が時々発生。谷としては全般に不安定な感じ。2300mあたりで南峰に突き上げる左俣と北峰に向かう右俣に分かれるが、ここでちょっと迷う。当初はかつてY倉・H野組の辿った左俣経由で鹿島槍登頂を計画していたが、時折小雪崩が起こり不安定な様子である。右俣方面はブロックだけで安定しているようなのでこちらを選ぶ(この判断は結果的には幸運であった)。

f:id:teradaya:20070506105023j:image左右俣分岐。右に向かって正解。

徐々に硬くなる雪面にステップを切りながら右俣を登って行く。靴先10センチくらいしか入らなくなり片手をピッケルに換える。傾斜はさらに増し、両手両足で登る感じである。20歩毎に休んで息を整える。東尾根に人影が見えてきたころ、南峰直下から点発生表層雪崩が自然発生するのが目に入る。徐々に広がり左俣を300mばかりゆっくりと落ち分岐を越えて自分のステップも埋められてしまった。

急傾斜とあいまってかなりビビるも、気を取り直してさらに登行を続ける。天気は良いが時々突風がきて耐風姿勢をとる。右に右にと進んだので北峰からのびる東尾根に突き上げる形になった。東尾根登攀パーティが数人行くのが目前に見える。左俣はさらに頻繁に小雪崩が起こり気が滅入る。11:50、ようやく東尾根直下に達したが、北峰を越えて南峰最高点に向かう気力はなく、滑降に移ることとする。

f:id:teradaya:20070506105048j:image鹿島槍東尾根より爺方面

f:id:teradaya:20070504115645j:image鹿島槍南峰を望む

f:id:teradaya:20070504115702j:image吸い込まれそうな滑り出し!(かつて北壁を滑ったO橋さんはこれを「快適そうな斜面」と記していた)

足場を固めて慎重にスキーに履き替え、下部に他パーティがいないことを確認して12時に滑降開始。急傾斜で滑り出す勇気がなかなか起きず、1分ほど逡巡。雪玉を落としてみるとはるか下まで転がっていった。びびり気味に斜滑降からスタート。自分の起こした小雪崩(スレフ)は10m程で止まるのを確認し、意を決してターンを決行。幸い雪は快適なザラメ。数ターンしては横によけて自分の起こしたスレフをやり過ごすパターンでいく。登りで目標点にした小インゼルを目標に慎重に左寄り気味に進路を選ぶ。標高2500m付近の登りで苦労したあたりは適度に雪が硬く広い斜面であり、気持ちよく連続ターンを決める。先ほどの左俣のデブリを右手に避けながら、谷の左側を急いで通過。左岸も決して安定しているわけではないので用心して止まらずに急ぐ。デブリ帯を苦労して乗り越し、12:40ようやく一息入れた。

f:id:teradaya:20070504124750j:imageようやく安全地帯で一息

水がうまい。下部緩斜面帯を流して滑り13:10に出合に帰着した。

気温が高いのか、出合先の雪は消えており運動靴デポ地点までとぼとぼと歩いて戻った。

左右からの崩落が落ち着くまで、もう1~2週間待ったほうがよいかもしれない。久々に心臓に悪い山行であった。

春の信州の里景色を楽しみながら高速に乗り、連休の渋滞に巻き込まれて帰宅した。


f:id:teradaya:20080920120746j:image大町の里から鹿島槍


(行動記録)

大谷原(1080m)0435-西谷出合(1330m)0525/0535-布引尾根取付の先(2100m)0800/0820-二股(2300m)0910/0930-東尾根北峰下(2710m)1145/1200-デブリ帯下(1770m)1240/1250-西谷出合1310/1320-大谷原1405

(登行高度)1630m (滑降高度)1380m

(メンバー)単独

(装備)初代バンデット(170cm)、ディアミール1、ガルモントアドレナリン